プロローグ

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 水も食べ物もなく、それを手に入れる手段も失くしたスラム。そこには他人を食べて生き残るか、死を待つか…どちらにしろ未来も希望もない。そうなったスラムにふらっと訪れて、その者たちを自分の民(モノ)にする男が現れるようになった。 「お前達、オレの民にならないか? オレの民になるなら、水も食料もやる。だから、オレのために生きろ」 全てを欲する強欲は、今日も難民の命を拾う。病人だろうと見捨てない。強欲は拾うことはあっても捨てることはないからだ。そして何故かその男が訪れたスラムには水が湧き、大地が潤い恵美ができる。そしてスラムは少しずつだが豊かになり、村となっていく。だが、そうなれば盗賊などが村を襲うようになる。 「お前ら、二度とオレの国に手ぇ出すな。…オレの民になるなら、もう誰も傷つけなくても生きていけるようにしてやる」  だがその男は盗賊でも拾う。拾われた者は更生し、二度と人を傷つけなくなる。こうして、男の国は拡大していく。王家に気付かれぬよう水面下で少しずつ、だが確実に。理想郷(ユートピア)は男の野望と共に、多くの難民を救っていくのだった。
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