第一章

8/30
前へ
/37ページ
次へ
BAR「ラグナロク」 来店を知らせる鈴が鳴り、店長がドアに顔を向けた 「いらっしゃい。って伍長じゃないか。どうしたんだ?」 「俺は伍長じゃ無いって、三佐。カシスソーダ頂戴」 カウンターに座り、葉巻に火をつける。ふぅと一煙吐き出したところで、カクテルが出てきた 「伍長、葉巻を吸うようになったか?お前にも、この豊潤な香りが分かるようになったか」 「まぁそんなところさ。店長」 また一煙吐き出した。そして、グラスの中身を一口飲み込む。 「何かツマミを出そうか?伍長。何が良い」 「ウィンナー。ドイツのやつ。あるかい?」 「ああ、待っていろ」 あるのかよと、進藤が呟く頃には、既に店長は厨房の中に入っていた。 数分たつと、店長が子鍋を持ってきた。 「これだ。ナイフで切り込みを入れて、フォークで皮からはがして食べろ」 「ああ。ありがとう」 言われた通りの動作をして口に運ぶ。 「ところで・・・伍長、オモイカネの贄という伝承を知ってるか?」 「聞いたことはあるが、詳しくは知らないな」 店長は、昨日の話をした。 「へぇー、そんな話だったのか。それで、いきなりどうしたんだ?店長」 「いや、深い意味はないんだ」 進藤は、首を傾げつつも、先ほどのウィンナーを口に運び、会計をして、店を出た。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加