シリコンと兄さんと…

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「シリコンー。」 兄に名前を呼ばれてケイは顔を挙げた。 「あら、兄さん。」 ぱっと嬉しそうな顔をして、ケイは兄に駆け寄る。 「か、可愛い…!!確かに君に似てないね!」 「そうでしょう? シリコン、お弁当箱を間違えたから交換しに来たんですが…もう食べてしまったかな。」 「あら、ごめんなさい、食べてしまったわ。わざわざありがとう。」 ケイが兄と話していると… 「何なに!?ケイちゃんのお兄さん!?」 カルシウムが割り込んできた。 「…似ていない。」 背後でアルゴンがぽつりと呟く。 「そーね!アルちゃんとヘリウムの方がよっぽど似てるもんね!! 所で名前なんてーの!?」 「あ、はい、シリコンがいつもお世話になっております。 僕はゲルマニウムと言いますよ。」 「私カルシウム!あっちの子はアルゴンで、それであっちの子が…」 「フォスフォラスと申しますが、リンと呼ばれてます。ケイちゃんと仲良くさせて貰ってますの。」 リンはにこりと笑ってお辞儀をした。 「す…ストライク…!!」 隣でガリウムが呟いた。 「はい?」 「なんて愛らしい少女なんだ…!まるでマルセイユの川沿いに咲くスズランの様だ…!!」 「まぁ♪」 リンは上機嫌だ。 「あぁ、君、アルセ君にもストライクとか言ってましたね。つまり、背丈の小さい子が好きなんですか…はっ!シリコンは駄目ですよ!!」 「シリコンちゃんは可愛いけど、ゲルマニウムが義兄なんて嫌だからね。私はリンちゃんがいいな。 …ところでこのクラスの男の子は?背丈の小さい子が多いって聞いてたから期待してたのに。」 「外でご飯食べてるわ。」 窓から見えるグラウンドでは、ワイワイ野球をやっている男子生徒の群れが見えた。 「よし!突撃しようかゲルマニウム!!」 「何故僕も?僕は君と違って男の子に興味ありませんから。」 そう苦笑いしたゲルマニウム。 …数日後、運命的な出会いをするとも知らずに…。
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