シリコンと兄さんと…

5/6
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
ドアの陰で会話をする声が聞こえてゲルマニウムが振り向くと、妹の教室で見掛けた派手な髪色の少女が誰かと話していた。 直感的に、自分に用事があるんだと分かる。 「あ、ども!!確かシリコンのお友達でしたよね…?」 「久しぶり、カルシウムよ!」 「お久しぶりですカルミウムさん!」 カルシウムの隣に誰かが居ることに気付き、目をやる…。 一瞬心臓が止まるかと思った。 「…そちらの殿方は?」 ゆっくりと言葉を紡ぐ。 止まりかけた心臓が、今度は激しく音を立てて動くのが分かる。 「…む、ボロンと申す。」 人の名前を覚えるのは苦手だが、とりあえずいい声だな、とゲルマニウムは思った。 「ボラニウムさんですね。僕はシリコンの双子の兄、ゲルマニウムです! いつも妹がお世話になっております。」 早口にまくし立て、お辞儀をした。 「実はね、今日はケイちゃんのことで貴方にお願いがあるの!」カルシウムが割り込み、説明した。 ボロンがケイに片想いをしており、さりげなく想いを伝えて欲しいということを。 ゲルマニウムは何だか複雑な気持ちになった。 大切な妹に男を近付けたくない。 しかし此処で断ったら自分と彼の接点が消えてしまう… 「わかりました、協力させて頂きます」 かけた天秤はあっさり傾き、自然に返事をしていた。 やったねとカルシウムは喜んでいる。 「…ただし、こちらもお願いがあるんだけど…」 傾きかけた天秤が再び揺れる。 ボロンはただならぬ気配を感じてびくりと震えた。 「ボタミウムさん…すごく健康そうないい身体してますよね…?」 彼の身体を舐めるように眺め、にやりと笑う。 「僕、科学部で色んなクスリを作るのが趣味なんですけど…」 「ななな…何が言いたい…!?」 恐怖に怯えながらも、次の言葉を待つ。 「…モルモットに、なって下さいよ。」 「わぁ、モルモットだって!ボロン大好きでしょ小動物!!」 「意味が違ーう!!!そしてお断りするー!!!」 そう叫んだボロンはカルシウムを置いて逃げていったのだった。 そしてこの日から、恋に目覚めたゲルマニウムのストーk…いえいえ、アプローチの日々が始まるのだった…。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!