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ドアの陰で会話をする声が聞こえてゲルマニウムが振り向くと、妹の教室で見掛けた派手な髪色の少女が誰かと話していた。
直感的に、自分に用事があるんだと分かる。
「あ、ども!!確かシリコンのお友達でしたよね…?」
「久しぶり、カルシウムよ!」
「お久しぶりですカルミウムさん!」
カルシウムの隣に誰かが居ることに気付き、目をやる…。
一瞬心臓が止まるかと思った。
「…そちらの殿方は?」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
止まりかけた心臓が、今度は激しく音を立てて動くのが分かる。
「…む、ボロンと申す。」
人の名前を覚えるのは苦手だが、とりあえずいい声だな、とゲルマニウムは思った。
「ボラニウムさんですね。僕はシリコンの双子の兄、ゲルマニウムです!
いつも妹がお世話になっております。」
早口にまくし立て、お辞儀をした。
「実はね、今日はケイちゃんのことで貴方にお願いがあるの!」カルシウムが割り込み、説明した。
ボロンがケイに片想いをしており、さりげなく想いを伝えて欲しいということを。
ゲルマニウムは何だか複雑な気持ちになった。
大切な妹に男を近付けたくない。
しかし此処で断ったら自分と彼の接点が消えてしまう…
「わかりました、協力させて頂きます」
かけた天秤はあっさり傾き、自然に返事をしていた。
やったねとカルシウムは喜んでいる。
「…ただし、こちらもお願いがあるんだけど…」
傾きかけた天秤が再び揺れる。
ボロンはただならぬ気配を感じてびくりと震えた。
「ボタミウムさん…すごく健康そうないい身体してますよね…?」
彼の身体を舐めるように眺め、にやりと笑う。
「僕、科学部で色んなクスリを作るのが趣味なんですけど…」
「ななな…何が言いたい…!?」
恐怖に怯えながらも、次の言葉を待つ。
「…モルモットに、なって下さいよ。」
「わぁ、モルモットだって!ボロン大好きでしょ小動物!!」
「意味が違ーう!!!そしてお断りするー!!!」
そう叫んだボロンはカルシウムを置いて逃げていったのだった。
そしてこの日から、恋に目覚めたゲルマニウムのストーk…いえいえ、アプローチの日々が始まるのだった…。
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