最後の文化祭 前編

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    「まぁ銀は恥ずかしいのかもね……『そんな感じ』くらいでしか、紹介してくれないしさ」   それだけ言って、あいつは俺に飲み物を押し付けてパンを引ったくるように奪い、去って行ってしまった。   あぁ、そういう事か……  押し付けられた飲み物と、自分のパンを見て息を吐く。女心ってのは、ホントよく分からない……     ――     銀は自分から付き合っているとか言い触らすタイプじゃないから、皆が知らないのは仕方ないと思う。  けど、「彼女?」って聞かれたら、「そうだよ」って返すのが普通なんじゃないの!?「そんな感じ」って何なのよ!   くだらない事だって分かっていても、そう思わずにはいられない。  それに、久々に帰ってきたってのに銀の態度が前とまったく変わらないのが……少し、悔しい。もうちょっとその、構ってくれても――     そんな事を考えているのに気が付いて、立ち止まる。  何言ってんだろ、あたし。アメリカ行って帰ってきても、何も変わってない。子供っぽいままだ。    
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