セイジ。

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俺は日頃のバイトを辞め、組に出入りするようになっていた。 バイトは飲食店の調理補助などをしていたので、そのまま組の中でのまかない等を作る事を任されたのだ。 と、言っても補助でだけど。 「セイジー。じゃがいもの皮剥いといてくれるか?」 「はい、兄ぃ!」 俺はバケツ一杯に入ったジャガイモに向かう。 「皮むき機使ってもええから」 「分かりました」 アニキと呼んだ人物は、本家に長く男性で奥さんが不在の中を色々と家の事を支えている人だった。 名前は、楠木ユタカ。 人当たりの良い笑顔と、誰にでも気が利いて気配りができる人だ。 奥さんの弟らしい。 ジャガイモの皮を剥いていると、ユタカが話しかけてくる。 「組の空気には慣れて来たか?」 しゃべりながらも、自分も作業の手を休めない。 「はい。怖い所だと思ってたッスけど、そうでもないんだなって」 「ははは。常日頃から険呑なわけじゃねぇよ」 「そうッスね」 「親父から聞いてるが、お前はこれから裏の仕事をしなくちゃいけねぇんだな…」 「それが、自分がここに置いてもらえる条件なんで」 「だからって卑屈になるなよ?お前はもう、うちの家族なんだからよ」 「…分かってるッス」 心が、温かくなる。
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