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「わざわざ呼び出して悪いな」
「いえ」
組長の部屋で、机を挟んで向かい合って座っていた。
「…お前がここにきてから、何年になるかな?」
「…2年くらいッスかね」
「早いもんだな」
何の話なんだろう?
「…近々、関東の方へやっていた娘が戻ってくる」
そう、俺がここに来てから一度も娘を見た事がなかった。
見るのは、写真ばかり。
「ちょっと組のゴタゴタがあって、巻き込まれない為に向こうで中学に行かせていたんだが…高校からはこっちの所に通わせようと思ってな」
「はぁ…」
何と言っていいのか、分からない。
「それで、娘…マオが戻ってくるまでにこっちの家に来て欲しい」
「関の家から引っ越しッスね?」
「そうだ。お前には家の事とかを任せたい」
「ユタカの兄ぃは?」
この家の家事全般はユタカがやっている。
「ちょっと、違う仕事に専念してもらおうと思ってな」
「そうッスか…」
「それと、お前には内密で調べて行って欲しい事がある…」
組長の表情が、堅くなる。
俺も、身を正す。
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