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気がつくと要は、その細い体を自分の腕の中に収めていた。
「っ要……!?」
「あ……ごめんっ」
「う、うぅん」
無意識な自分の軽率な行動に、顔が真っ赤だった。
真広の頬も、心なしか紅潮していた。
その後は色んな話をした。初恋と、失恋を忘れて。
久しぶりに、楽しかった。
だけど。
「まひ…ろ……」
一緒に帰る約束をしていて、真広を呼びかけた時だった。
「真広、今帰り?」
「あ、凌矢」
ピタリと、要の動きが止まる。
柔らかな笑顔で、真広の頭をなでる凌矢と呼ばれた男。
楽しそうに、嬉しそうに話す真広の笑顔が、目の奥に焼き付いて離れなかった。
要はそのまま踵をかえし、真っすぐ家に帰った。
ざあっとこすれた枯葉の音に、真広は要の姿を捜す。
「あれ…要……?」
# # #
「はは……忘れてたわ…」
キャンパスから徒歩5分の寮。
2階にある部屋へ帰って寝室のドアを無造作に開け、何も考えずにベッドに倒れこむ。
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