選ばれたひと

2/7
前へ
/25ページ
次へ
「おっ、いいのはっけーん」  パシャッ。  誰もいない静かな庭にシャッター音が響く。 「…またやってんの? 要」 「仁美」  永倉 仁美。要よりも幾分年上だが、同じ年にここへ来た。  隣り合って並んで、空を見る。 ぽっかり浮いたわたあめ雲が、せわしく流されていった。 「また撮ってんのかって、優が呆れてたわよ」  木下 優。要と同い年だが、要よりも3年早くここへ来ている。 「ほっとけ。俺は空が好きなんだよぉーっ」  風が前髪を掻き上げ、額を頬を撫でていく。  ふっと仁美がうつむいたのが、横目で見えた。 「目の前にある……空がね」 「……あぁ」  ここは、いわゆる"天国"だ。  そしてここはだだっ広い"学校"の庭。  ──バシィッ! 「いっ…てぇ!! 痛ぇよ仁美!」 「らしくないわ、このバカ!! 大天使様がお呼びよ」  仁王立ちで要を見下ろす仁美。  膝から崩れた要は、体勢を変えて仁美の方を向く。 「莉舞? 俺なんにもしてないのにぃ」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加