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「おっ、いいのはっけーん」
パシャッ。
誰もいない静かな庭にシャッター音が響く。
「…またやってんの? 要」
「仁美」
永倉 仁美。要よりも幾分年上だが、同じ年にここへ来た。
隣り合って並んで、空を見る。 ぽっかり浮いたわたあめ雲が、せわしく流されていった。
「また撮ってんのかって、優が呆れてたわよ」
木下 優。要と同い年だが、要よりも3年早くここへ来ている。
「ほっとけ。俺は空が好きなんだよぉーっ」
風が前髪を掻き上げ、額を頬を撫でていく。
ふっと仁美がうつむいたのが、横目で見えた。
「目の前にある……空がね」
「……あぁ」
ここは、いわゆる"天国"だ。
そしてここはだだっ広い"学校"の庭。
──バシィッ!
「いっ…てぇ!! 痛ぇよ仁美!」
「らしくないわ、このバカ!! 大天使様がお呼びよ」
仁王立ちで要を見下ろす仁美。
膝から崩れた要は、体勢を変えて仁美の方を向く。
「莉舞? 俺なんにもしてないのにぃ」
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