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短く刈られたきれいな芝生。
鋭い葉で切った指をぺろりと舐めながら言う。
「気に入られてるからって呼び捨てにしない! それに、いつまでも座り込んでないで!」
仁美が要の腕を思い切り引っ張った。
「ワガママだなぁ、仁美は。 わかったよー」
深呼吸をして伸びをする要。
高い身長がさらに高くなって、元に戻る。
「まったく…」と呟いた仁美を、要はちらっと見た。
「ありがとな、仁美」
整った顔立ちの要。
目元がくしゃっとなる可愛い笑みを残し、仁美の頭を撫でて歩いていった。
1人残された仁美は、要の触れたところに手を重ねてみる。
顔が、熱い。
「バカじゃない…」
パシャッ。
誰もいない静かな庭に再び、シャッター音が響いた。
# # #
コンコンッ
「はぁい。どーぞぉ」
語尾がとろりとのびた返事。
それが終わらないうちに、要は立派なドアを開ける。
「莉舞、来ましたよ」
「要かぁ。待ってたよ」
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