選ばれたひと

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 要のそばにしゃがんで、頬を長い指でなぞるように撫でる。  その瞳には鋭さが宿っていた。 「は……い…」  朦朧としている要の瞼に莉舞がキスを落とすと、瞼が完全に閉じられる。  そして、ゆっくりと深い呼吸をし出した。 「…君には…たくさん働いてもらわなきゃ…」  莉舞は要を姫抱きにし、ベッドルームへ連れていって、要をそっとおろした。 「…ん……」  ゆっくりと要の寝顔を眺めていた莉舞。漆黒の髪を払いのけ、首筋をあらわにした。  それに爪を立て、つっ…と引っ掻いた。  滲み出る真紅の血。  指についた要のそれを、ぺろりと舐めた。 「…要……大好きだよ…」  そう言って、莉舞は"それ"に顔を近づけた。     #  #  # 「……ん…」  ぐらぐらとぼやける視界。  まだはっきりしない意識のまま、耳に言葉が投げ込まれた。 「要、起きたぁ?」  先ほどの鋭さとは打って変わって優しい声。  しかし、 「…あれ……俺何でここに…?」  要は『戒め』を受けたことを覚えていなかったのだ。
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