選ばれたひと

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 莉舞は質問には答えず、要の目の前にコップを差し出した。 「これを飲んで」 「…これは?」  完全なる透明色をした少量の液体が、光に当たってキラキラと光る。 「……"水"だよ」  莉舞の表情に、要は頭上に"?"マークを浮かべながらそれを口に含む。  瞬間、要の心臓がどくんっとうずきだした。 「あっ…あ……!?」  コップを手放し、ベッドに再び激しく横たわる。  要は少しだけもがいたが、だんだん落ち着いていく。 「はっ……何、なんすか、コレ……?」 「…君は五大天使[僕ら]に選ばれたんだよ」 「…は…?俺が、選ばれた…?」  要は上体を起こし、ベッドの傍のソファーに深く腰掛けた。 「そうだよ」 「選ばれた、って……何に…?」  深く息をしながら、隣に座った莉舞を横目で問う。 「下界の視察員にね。虹色に輝くテントウ虫の姿で、2週間だけ、下界に帰られるんだ」
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