辰也

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つい先ほどまで不機嫌だった珠美の機嫌もある程度回復し、とりあえず映画の前に昼食をとる事にした。 俺と珠美は、映画館の向かいにあるファミレスで食事を済ませる事にする。そこは映画館とは道路を挟んで向かいに建っており、交通量の多いその道路には歩行者用信号機が設けられていた。   なかなか変わらない赤信号に苛立(いらだ)ちを感じながら、俺は目の前を通過する車をただ呆然と目で追っていた。   「…まぁ、バスでもいいか」   …? 何が?とも思ったが、どうやら珠美はバスに納得したようなので、バスで帰りたい俺は何も聞かない。   1分程たったところで信号が青に変わり、なんとなく俺は横断歩道の白線の部分だけを踏むように渡った。 そして、俺と珠美はファミレスに入るとすぐ左の窓際の席に着いた。   「ばり涼しい」   久々の冷たい風に俺は一瞬空腹感を忘れてしまう。 そしてしばらく涼しさを満喫してから、お互いのメニューを注文した。   「そぉいや俺ら付き合ってもう半年なるな」   俺は今まで、多くはないにしろ様々なタイプの女性と交際してきた。 その中でも珠美はかなりの美人だったのだが、「釣り合わないのではないか」といった様な劣等感などは全くなく、付き合った当初から不思議と気を遣わず接する事ができた。   「ホント、早いね」   告白したのは俺の方からだ。 まだ付き合ってない頃は、コンビニで働く珠美に少しながら興味を抱いていたが、好きという感覚ではなかった。 しかし、珠美は友達内でも評判がよく何故か俺が「早く告白しろ!」と、いつもからかわれていた。 告白したのも冗談のつもりだったのに、まさかああも簡単に付き合って貰えるとは思わなかった。  
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