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ズシン……ズシン……。そんな音をたてる見慣れた壁。
目の前の壁を見た少年ユータは、腹の底を握られるような感覚を覚えた。それを恐怖と理解するのには、まだまだ時間が必要のようだ。
ボーッと『対アラガミ防壁』を見ていたら、後ろから声がかけられる。
「何をやってんだクソガキッ!!」
反応できなかった。次の声は耳元から。
「何をやってんだって言ってんだよ!!」
耳がキンキンする。
「ちょ、ちょっと迷っちゃって、すみません」
適当なことを言った。ずっと考えてた言い訳。
「嘘つけ」
看破されていた。
調査員であろう制服を着た青年は割合に聡明のようで。
一呼吸置いて彼は言った。
「お前アラガミが見たいんだろ?」
「なっ、なんでっ!?」
驚きを隠せない。
「別に。お前と似た様な時があったなって、思っただけ」
彼はちょっとだけ、遠い目になった。
「だったら──」
「それとこれとは別だ」
キッパリと言われる。
「ここはキチンと危険だ。逃げんぞ」
その時だった。『対アラガミ防壁』が『ヴァジュラ』によって、破壊された。
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