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この子の気持ちはわかる。
昔の自分とそっくりだとマウミは思ったからだ。
だからこそ、こんな形で叶えてはいけない。アラガミをこんな形で見せてはいけない。
さっき自分は言ったのだ『ここはキチンと危険だ』と。
無駄話すら悔やんでしまう。
「ちぃっ、ガキっ早く来いっ」
少年は動かない。
巨大な虎の様な姿をしたアラガミ『ヴァジュラ』。彼はそれに魅入っていた。
「くそっ」
少年を無理矢理抱え上げ、走り出す。
当たり前だがマウミ達は『ヴァジュラ』に見つかっている。
今この場所にいるのは、自分達だけのたった三人。
こんなことなら『第一調査隊』の全員で来ればよかった、と思ったが考えを改める。人が多くともゴッドイーターがいなければ、死人が増えるだけだろう。
「隊長! スタングレネードをっ」
「わかってるっ」
隊長が放つスタングレネードで『ヴァジュラ』が怯んだ。
「隊長、こいつ頼みます」
少年を隊長に渡す。
「俺は時間稼ぎに行きますっ」
宣言しマウミは『ヴァジュラ』に向き直った。
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