私を修理屋まで連れてって!

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『ザーザーァザー』 『ザーッ…』  ようやっと降り続いた土砂降りの雨が止んだのも、男が大学から走って車に乗った後だった。 「ハァ…ツイてないなぁ…」  別に『鍵が』とかそういうのではない。  この男、「藤園 誠(ふじそのまこと)」は、一言でいうと凄く運が悪いのだ。  バスケの授業でリングが外れ頭にネットが引っ掛かって抜けなくなったり、トイレの個室使用の際に鍵が壊れ、出れなくなって助けを求めたり…兎に角運が悪いのだ。  その不運が祟ったのか、今日も中学時代から愛用していた傘が盗まれ、この濡れ鼠となったのだった。 「勘弁してよ…ハァ…」  溜息混じりに愚痴をこぼす。  しかし、今の誠にはそんな鬱々とした気分すら払う物があるのだった。-車である。  実は車好きで、今乗っているソレも大層なこだわりの先にようやっと手に入れたモノだった。 「さて…落ち込んでてもしょうがないし、帰るとしよう…」  そう言いながらキーを回し、掛かったエンジンの音を堪能をしてから発車し、帰路へ向かった。
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