紫集院曜介

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「…こんなもんかな」 仮仕上げが終わった会議資料を入念に見直し、一息つく。腕時計を確認すると時刻は10時前。 …本仕上げは家に帰ってからにしよう。 今日は家で俺が帰るのを待ってるやつがいるからそう遅くまでは会社にいられない。 デスクの上を片付け、会議資料を鞄にしまう。 「お先に失礼します。」 まだ仕事が残っている先輩達に挨拶をして、俺は会社を後にした。 「うー…寒っ」 そろそろ季節も冬。 夜風がスーツの上から羽織ったコートをすり抜ける。きちっと絞めたネクタイが風に揺れる。 駅から少し離れた2LDKのマンションの一室に住んでいるため、少し歩かなければならない。 肩をすくめて早足で歩けば、後ろから俺を呼ぶ声がする。足を止めて振り向けば、幼馴染みじのそいつも寒そうに体を縮こませながらやってきた。 「おう。桃もいま帰り?」  
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