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「どういうことよキース?列車が運転を見合せるなんて…おかげさまでエルヴシティに着くのが深夜になったじゃない…」
「落ち着いてくださいお嬢様。人間という生き物は所詮、自然的な災害には勝てはずがないんですよ。ここで私に当たっても仕方ないと思われますが?」
身長は180センチぐらいあり、黒いロングコートにスーツを着た私はベンチに座りながら言った。
腰に達するまで長い髪にルビーのような紅い瞳、絹みたいに白い肌が私を余計に凛々しく見せる。
その隣にまるで人形に命を吹き込んだような身長152センチの愛らしい美少女がふてくされながら腰を下ろす。
クリーム色のカーリーヘアに今流行りの漆黒のゴシックロリータファッションに身を包む彼女は誰もが羨ましそうに見るほど愛らしく美しかった。
無論、そんなか弱そうで傲慢・プライドが高く我が儘な彼女が私の主だとは誰も思ってはいないだろう。
私たちは今、赤い塗装を施した列車に乗って壮大な草原の中を駆け抜け、目的の地である観光の町『エルヴシティ』へと向かっていた。
しかし数時間前に列車が通る線路の途中にある活火山が噴火して交通網が麻痺し、目的の地『エルヴシティ』まで行くための交通機関であるこの列車も運転を見合わせていた。
そして漸く運転を再開し、恐らくエルヴシティに着くのがもう深夜だろう。
列車の窓から外を覗くと、深く霧のような靄が辺りを覆っていて、いかにも何かがいるような雰囲気を醸し出している。
無論、観光をするにしても深夜では見るものがないし、この霧では眺めは悪く観光どころではないだろう。
今日は大人しく駅前のホテルにいたほうがマシだと、キースはそう考えていた。
だが、その町へ行くのを楽しみにしていた美月はそれを断固拒否するのは目に見えている。
霧だろうが靄だろうが、深夜の町中を歩く気満々そうだ。
さてさて、この我が儘なお嬢様をどう寝付かせましょう……
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