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───イメージは蝶だった
───宙をユラユラとはためく
───風に流されてなかなか飛べない
───私は自由に蒼空を飛べなかった
───身勝手な独裁者のせいで
───私と同じようにこの蒼空を
───飛んで貰いましょう
───全ては復讐のために
───しかし、その蝶は飛べなかった
───突然、飛び散る鮮やかな羽
───気がついたら私はもう飛べない
───天高く聳え立つ塔に縛られて
───深い奈落の底に堕ちた
───ユラユラと螺旋を描き
───ゆっくりと墮ちていく
───私はもう飛べない蝶
───それはとてもか弱く
───とても儚くて美しかった
私は揺られる列車の中で唐突に目を覚ました。
どうやら座席に座ったまま、居眠りしていたようだ。
それにしても先ほどの夢はなんだったのだろうか。
ふと、前の座席に目をやるとお嬢様こと月揺 美月がまるで子猫のように座席で丸くなり、静かに寝息を立てていた。
先ほどまであれだけ私に我が儘を言い、騒いでいたお嬢様。
しかし、時にいろいろな表情を見せてくれるお嬢様を見ていて飽きはしなかった。
私は静かにその長い足を組むと、ツバのある帽子を少し下に傾けた。
目的の地『エルヴシティ』まであと一時間半といったところでしょうか。
現在の時刻は午後10時10分。
列車はかれこれ二時間は走り続けている。
さて、もう一眠りすることにしましょう。
またいつ始まるかわからない、お嬢様の我が儘に付き合ってもいいようにね。
キースは静かに目を閉じた。
次第に遠くなる列車が軋む音。
迫ってくる深い闇。
それはまるで何かを伝えるように一瞬だけ歪むと、また静かな暗闇に戻る。
そしてキースは深く眠りに着いた。
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