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「ふぅ……やっと着いたわ…あんなに待ち焦がれてたエルヴシティに…」
「散々な長旅でしたねぇお嬢様。さて、今日はもう遅いですし明日に備えてホテルに泊まって寝ましょう」
「フフン…甘いわねキース。今から観光に行くわよ!!待たされた分を思いきりね!!それにさっき充分睡眠は取ったわ!!さぁ行きましょう」
「ちょっと無茶苦茶なことをおっしゃらないでくださいお嬢様…。今の時間帯を考えてみてください。常識的に考えて今、簡単に私たちお客様を入れてくれる観光施設があると思いますか?明日なら見る時間はいくらでもあるので、今日は大人しく寝ましょうお嬢様?」
エルヴシティ駅に着いてから早々に始まった美月お嬢様の執拗な我が儘。
こうなるとは予想していたが、思ったよりも美月の行動が早かった。
私は肩を揺らし、大きくため息をつく。
さてさてどうしたものか…。
とりあえずお嬢様を拐われては元も子もないので必死に説得するしかなさそうだ。
応じなかった場合は大変手荒な真似なのでしたくはありませんが、峰打ちで失神させてホテルに運ぶという強制的な方法を取らせていただきますよ。
こちらとてただ単にお側にいるだけではなく、私の主である貴女さまの大切なお命を敵から未然に守る義務がありますからね。
そして彼女の偉大なる力を私利私欲のために使う輩や悪党、それに雇われた回収屋などもいるかも知れない。
強いて言えば夜な夜な一人で出て歩かれるなど、私からしてみれば自ら拐ってくださいと言っているようなもの。
何があろうともそれだけは防がなければいけない。
それをふまえて私は必死になってお嬢様を説得しようとするが、案の定興奮している本人は聞く耳を持たなかった。
キースの横をすり抜け、スタスタと霧が立ち込める街の中を歩く美月。
やれやれ…言っても無駄なようですねぇ…。
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