第五席 赤い満月の下

3/4
前へ
/104ページ
次へ
ある日、青年の前に1人の男が現れました。 男は青年に一言 「吏音、お前、死んだほうがいいよ」 そういってポケットに入っていたサバイバルナイフを取出し刃を青年に向けて構えました。 男がなぜこのような暴挙に出たのかと言と                          数年前、青年によって一生癒えることのない傷を心と身体に刻まれ、今になって恨みを晴らそうと思ったからでした。 青年は無言のまま男を見据えていました。でも、その視線には蔑みの色が感じられます。                 それに耐えられなくなった男は青年に向かって走りだしました。                青年はそれを避けることはせずに、男と男が握っていたナイフを受け止め、そして                 「俺より、劣る人間に殺されるなんてな・・・・」 青年の口や身体からは真赤な血が零れていました。 男がナイフから手を離し後ろに半歩下がると、支えを無くした青年の身体は、よろめき壁に背中を預けてずるずると力なく崩れて行きました。                 男はそれを見て、嘲るような笑みを浮かべたかと思うと、その場から走り去って行きました。 青年は1人、自らに突き立てられたナイフを抜き、空を見上げています。 「・・・・・主よ、大いなる我が父よ。 俺は、何度生まれ変わろうと、あんたを恨み続けてやる」 青年、吏音の何度目になるか分からない人生の最期の言葉。                                その日は、真赤な満月で、吏音が神を恨み初めて丁度、一億年がたった日でした。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加