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あわてて学校へと向かうと一人の女子生徒とすれ違った。
胸にはコサージュをつけていることとセーラー服を着ていることからうちの学校の卒業生ということが分かった。
卒業式をほったらかしにするのはまずいだろうと思い彼女に声をかけようとして振り返ったそのとき視界がぶれた。
視界が揺らぎ平衡感覚が上手く取れず、目眩のような感覚に襲われその場に踞った。
く、またか……。
「そこの少年」
なんだ、という言葉は相手には届かなかった。
「ふむ……。面白い」
彼女がどこか幻の珍獣物を見たような驚きと感心した顔をしている気がした。
「次は君の前に現れてやろう」
彼女は意味深な言葉を残し、カツカツと革靴の底でわざと音をたてながら歩み去っていく。
顔を上げた時には彼女の小さな背中しか見えなかった。
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