プロローグ

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 結良利央(ゆうら りおう)、15歳。桜華学園という男子校への入学を明日に控えた、いまは特に珍しくもない腐男子。高校生活は寮暮らし。荷物も送った、制服も準備した。あとは寝るだけ、なのに、妹と母さんがなかなか離してくれない。 「利央兄、忘れ物ない?」 「大丈夫」 「ちゃんと着替え詰めた? 制服にシワできてない? 携帯の充電器は? 校章は?」  まるで母親のように荷物の確認を促してくるのが妹のセナ。その横で母さんがにこにこと見つめてくる。圧がすごい。  腐男子の僕が男子校に進学を決めたのは“そういう”目的だ。  腐っているのは母さんとセナも同じで、家族で共通の趣味を持てたのは母の影響が大きい。というより、家で僕とセナが母さんの隠していたお宝を見つけてから、家で大っぴらに趣味を楽しむようになって自然に引き込まれた。結果、この目でBLを拝むために男子校に入学を決めた単純脳です。それでいいんですやりたいことはやりましょう。 「千歳、ゲーム開いたままだよ……!」 「あら、忘れてた」 「ヘッドホンのコードに引っかかって、卑猥な音が……」 「ごめんなさーい」  慌ててリビングに来たのは父のリュカ。唯一、結良家で腐っていない。フランス人でどこかの富豪の長男らしい。姓にあたる名は忘れてしまった。婿養子だとか。千歳とは母さんのこと。  わたわたする父さんと打って変わり、母さんは悪びれる様子もなくおそらくゲームをセーブしに行った。  普段と変わらない家族を見るとしばらくこの日常を見れなくなるんだな、とふと考えてしまう。  明日から僕が通う桜華学園は、結良家の親戚にあたる従兄が運営している。特にスポーツや勉強、将来のことで行きたい高校がなかったこともあり、趣味であるBLをこの目で見れないかと思い、僕の高校生活を桜華に賭けることにした。母さんがすごい剣幕で勧めてきたので、まあいっか……というノリで承諾してしまったというのもある。  よくよく聞くと、僕の幼馴染まで犠牲にしたらしく、母さんを敵にしてはいけないと思った。
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