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きっと捨てられたのだ。「そっかぁ~お前帰る場所ないのかぁ でもなぁ 可哀相だけど連れて帰ってやれないんだよなぁ」
かつて、勇治は妻に動物を何か飼わないかと、提案したことがあったが、死んだら悲しいから嫌だと言ってきかなかったこともあり、いかなるペットというものも志垣家では禁止になっていた。
そういった背景もあり、勇治は一歩踏み出すことが出来なかった。
どうしようかと思いながら、その子犬の頭をさすった。子犬は小刻みにぶるぶると震えながらも勇治の手をペロペロと舐めた。なんとも愛くるしいその子犬を、思わず抱き上げてしまった。
こうなると短い間ではあるが情というものは簡単に湧いてしまうものである。勇治は、自分に言い訳しながら抱きかかえたまま車に乗せてしまった。子供が欲しくても出来ない辛さや悔しさは、妻同様勇治にも当然あった。多分その反動だったのかもしれない。
車の助手席にはちょこんと、その子犬が座っていた。何が自分に起きているのが解らず、とりあえず周りの臭いを嗅いでいた。
「やってしまった。どう言い訳しよう?」そんなことを思いながら家路についた。
「ただいまぁ・・・」
「あら 今日は早かったのね。ん?なぁ~に?」
「あのさ ちょっと言いにくいんだけどさ・・・」
「何よ。事故でも起こしたの?」
「いやっそうじゃないんだけど・・・」
夫のしどろもどろの回答に曜子は若干の苛立ちを感じた。それを察した勇治は、諦め半分で言った。
「あのさ 実はさ 子犬拾っちゃったんだよね。
ホントはさ 連れて帰るつもりとかなかったんだけど あのままじゃ他の野良犬に殺されたり、滑って川にでも落ちたら死んじゃうと思ってさ なぁ曜子 どうしたらいい?」
少し飽きれた表情で曜子は言った。
「貴方の気持ち解らないでもないけど・・・もう連れて帰ってるんでしょ?今更帰せないわ。早く連れてきてあげて」
「解った。連れてくるよ」
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