サンは知っていた

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サンの心臓は5年と9ヶ月でその動きを停止した。 あれから3ヶ月。サンが死んでからいろんなことがあった。警察は調書とり、建設会社は平謝りで謝罪してきた。妻 曜子は旅行から帰ってきて初めてそのことを知り泣き崩れた。が、その全てが勇治にとってぼんやりとしか映らなかった。最近になって少しずつではあるが、サンの死を受け入れることができるようになった。 勇治も曜子も知らないことで、後になって解ったことがあった。 サンが散歩を拒否していた 散歩の途中でも帰ろうとしていたのは全て理由があった。 サンは危険を予知して、あらかじめ回避していた。そう サンは全て知っていたのだ。 犬は吠えることはできても喋ることは出来ない。行動を起こすことのみで、相手に迅速に意思を伝えなくてはならない。 その行動が気まぐれに見えてしまうのは理由の解らないものからすれば、ただのわがままな犬と映っていたかもしれない。 でもサンはこう思っていたに違いない。 「お父さん お母さん 貴方たちに拾われて僕は幸せでした。ずっと一緒にいられなくてゴメンね。」と。 (終わり)
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