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正体不明の青年を店まで運び、自室に寝かせる。改めて彼を見ると……まだあどけなさを残した子供だった。
小柄で、顔立ちは整っている部類に入るが、顔色はかなり悪い。
「取りあえず、寝かせとくか…」
シエザは、寝室に寝かせた後にキッチンに向かう。
夕食の下ごしらえついでに、倒れていた青年に何か食べさせなくてはと考えたからだ。
「お人好しの世話焼き……間違ってねーな」
友人が自分を評する言葉を思い出し、シエザは、トレードマークの赤毛を掻きながら笑った。
「爺さん譲りだからなぁ……世話焼きは」
独り言を呟くと、調理に取りかかった。
夕焼けが近づく時刻……シエザは、再び自室を覗き込む。
件の青年は、ベッドから起き上がり、ボンヤリと窓を眺めていた。彼は、シエザに視線を移す……綺麗なバイオレットの瞳が、印象的だった。
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