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「シエザ!ビール二つ頼むよ」
スラム街にある酒屋は、賑やかな雰囲気に満ちている。
陽気な音楽が流れる店内の奥にあるカウンターで常連客の小太りの男性と髭面の男性が仲良く談笑している。
「はいよ。ビールと……つまみはオマケだ」
二人の前にビールとウィンナーを置いた男性は、快活に笑った。
シエザ……この店の店主で、ツンツンした赤毛に長身で体格が良い二十歳すぎの若者だ。
「有難うな。お前スッカリ立派になったじゃねーか」
「天国のジィさんも安心だ。後は、カミさんでも見つけりゃいいんだがなぁ」
髭面の男性は、ケタケタと笑いながら、ビールを飲む。
シエザは、困った笑みを浮かべるしかなかった。
「爺さんには感謝してる……ガキのオレを立派に育ててくれたんだからな。店ぐらい繁盛させないと…」
シエザは、目を細めた。厳つく、怖い目付きだと言われる風貌だが、こうして見ると、年相応な若者らしく見える。
髭面の男性は、にこやかに笑った。
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