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「……何だ?酔っ払ってんのか?仕方ないな」
あのまま放っておいたら、その辺で倒れかねない。下手すれば、スリに身ぐるみを剥がされかねないし、変な奴に絡まれたら大変だと思い、シエザは小走りに近寄る。
「お前、大丈夫か?」
青年の肩を掴み、声を掛ける。よく見れば、かなり若い……十代後半の年齢か、真っ黒な髪は、やや長く、上下とも黒服だ。唯一、身につけている質素なコートのみが白い。
身なりからして、スラム街の住人っぽかった。
「酔ってんのか?気分でも悪いのか?……帰れそうか?」
「……」
青年は、うつむいてるので、表情は分からない。
それに、何も答えない。
「おーい。何か…」
青年に再び声をかけたのだったが、シエザが手を放した僅かな隙に、謎の青年は、地面に勢いよく倒れた。
「すまねぇ、大丈……」
そのまま、全く動かない……代わりに寝息が聞こえてきた。
「道端で寝るなぁぁぁ!!」
シエザの絶叫が響いた。
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