♣第二章♣

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バーバラは今年で75歳になるバージニア州に住む老人である。この75年は彼女にとっては激動の時代と言っても過言ではない。 1935年 その当時としてはごく平均的な中流家庭に生まれつくことが出来た。 エレメンタリースクール(日本で言うところの小学校)に通う頃には少しばかりやんちゃで、彼女の両親はそのことで喧嘩をする場面さえあった。 まだ幼かった彼女の髪の毛は黄金色をしていて少しだけウェーブはかかっていたが、基本的にはオカッパで瞳は茶色 鼻筋は通っていたが高くはなかった。 肌は色白で背丈はそれほど高くはなく少しだけ肉付きがよかった。 近所の人からは「まるでお人形さんみたいで可愛らしいわね」なんて言われたこともあったが、あまりいい気にはなれなかった。 人形が取り分け嫌いと言う訳ではなかったが、そんな比喩ひとつで片付けられることが何とく嫌だった。 彼女には2歳年上の兄ハリーがいた。 兄もバーバラ同様髪の毛の色も瞳も 彼女より少しだけ肌が黒かったことを除けば、同じ遺伝子を受け継いであろうことは確実だった。 だがハリーは妹ほど活発ではなく、周りからは寡黙(かもく)もしくは陰気な人間と捉えられていた。 バーバラにとっては逆にそれが救いだった。 なぜなら彼女は兄を愛するがゆえに、誰か他の女に取られることが嫌だったが、今の様子からすれば言い寄ってくる者はいないだろうと考えた。 彼女にとって兄ハリーは唯一の兄妹であると同時に恋人でもあり友達でもある。そう思っていた。 どうしてそういう思考に至ったかは解らないがとにかく、彼女は自分が欲しいものは全て手に入れたいと考えていた。 もっともそう思っていたのはバーバラだけで、ハリーにとっては妹以上でも以下でもなかった。 ハリーがハイスクール(高校)へ通うようになった頃、バーバラはひとつの計画を思いついた。 現在バーバラはミドル(中学)2年生。 バージニア州の彼女たちの通う学校にも「飛び級」というものが存在していて、頭の回転がもともとよかったバーバラは少し無理をすれば十分射程圏内だった。 一目も暮れずバーバラは勉学に勤しんだ。今の調子でいけば来年には兄と同じ学校 同じクラス 同じ帰り道 朝から晩まで一日中のほとんどを兄と過ごせる。そう考えていた。 そんな最中、いつの間にかハリーには彼女が出来ていた。 彼女の名前はジェニファーと言った。
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