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一瞬バーバラの視界は真っ白になった。
兄は肉親であり兄妹である自分より垢の他人である《あの女》を大切に思っている。
何故兄は自分だけを愛してはくれないのか?どうして自分はこんなことをしてしまったんだろうか?
バーバラは自分の部屋に駆け込みこれでもかというくらい泣いた。
夜になり、両親が帰ってきて夕飯を食べないかと部屋のドア越しに言ってきたが、今日は調子が悪いからという理由でベッドに俯せに伏せていた。
どうやら兄は、今日起きたことは黙っていてくれたようだ。
その優しさがまた胸を締め付けた。
そして日々は過ぎ去り、やがて兄ハリーは家を出た。
決してバーバラに愛想つかした訳ではない。
ハリーが通う大学が家からは通うことのできない場所にあったからである。
あの未遂事件から、それほどまでに兄妹が寄り添うことはなくなってしまった。
しかし、バーバラはまだ兄のことを諦められない自分がいることも知っていた。
今に思えば、あの頃は若かった 若すぎた。そう老人は回想していた。
バーバラもすでに高校生半ば 彼女は金髪の髪をなびかせ、キャンパスを歩く姿はまるでモデルのようだった。
バーバラは本人の意思とは関係なく言い寄ってくる複数の男性と実験的に付き合ってはみたものの、やはり兄ハリーほど愛せる男性 独占したいと思う者は現れなかった。
バーバラはハイスクール卒業後、近くの鉄鋼会社で働くことになった。
彼女にとってなりたい職業があった訳ではなかった。もしかしたらモデルという選択肢もあったかもしれないが、すでにモデルとはほど遠い鉄鋼会社の事務員としてしばらくの間は身を置くことにした。
ここバージニア州には43の独立都市が存在していて、伝統的な産業が栄えた場所でもある。
主要都市としてはリッチモンド アーリントン ノーフォークなどがある。
バーバラたちが住んでるのはバージニア州の中でも北西に位置するありふれた小さな街だった。
バーバラが鉄鋼会社に勤めて、約三年の月日が経っていた。
ある時、他の部門から一人の男が転属してきた。名前はジョージといった。
ジョージは体つきはよかったが、ルックスはいまいちで、その黒髪は軽く癖があった。彼の顔は少し彫りが深く何分の一かはインディアンの血が入っていると思われた。
性格はというとそれほど社交的でもなく、人から尋ねられたら仕方なく会話をしているように見えた。
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