夫が女になった時

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 最初のうちは、仕事で疲れてるせいだと思っていた。  でも、あまりにも夫婦の営みがないものだから、おもいきって私の方から襲ってみたら愕然としてしまった。  夫のペニスは私の知っている大きさではなくなっていたのだ!  元々どちらかというと小さい方ではあったけれども、久しぶりに目にしたそれはびっくりするほど小さくなっていた。 「それどうしたの?」 と尋ねてもなかなか答えようとしない夫に、なにかの病気かもしれないと心配になった私は、 「病院行きましょ!私も一緒に行ってあげるから」 と言った。本当に心配で心配でたまらなかったからだ。  ところが、 「病院はちょっと……」 と夫は困った顔をして軽く拒否した。 「どうしてこんなことになっちゃったの?」 と詰問する私に着ていたパジャマの上を脱いで見せた夫は、 「おっぱいふくらんできたでしょう?女性ホルモン摂取してるから、下も小さくなってきたの」 と思ってもみなかった言葉を口にした。  ちょっと夫の胸がふくらんだのは、太ったせいだと思っていたから、私は混乱してしまった。 「女性ホルモンって……」 「女性化するためにネット通販で買ったホルモン剤飲んでる」 「女性化!?男のあなたがなんで?」 「……黙っててゴメン。わたし、女の子になりたいの」  夫の突然のカミングアウトに動揺した私は、 「そんなこと許されるわけないじゃない!あなたは私の夫で麻美の父親なんですからね!妙なもの飲むのやめて元のあなたに戻って!!」 とヒステリックにまくし立てた。 「もう戻れないよ」 「どうして?」 「もう正常な男性機能は失われた状態だし、わたしはどうしても女の子になりたいから」 「裏切り者!」  とっさに私の口から出たのは、そんな言葉だった。  フェミニンで繊細な夫は男らしくはなかったけれども、私にとっては確かに男だった。  私が結婚したのは男の夫で、ちゃんと麻美という子供だって出来たのに……来年は麻美は高校入試という年にまで成長したのに、今頃になって、 「女の子になりたいの」 なんて何考えてるの?  私は適当に服に着替えるとバッグ引っつかんで衝動的に家を出てしまった。
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