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日が傾きかけ、公園で遊ぶ子どもたちの声が少なくなったころ。
空の持つタモの中にキラリと光るものが入っていた。
「あ―――!! あった!! これっ、これか!?」
バシャバシャと水を跳ね上げながら可奈の元へ走ってくる空は、水浸しの泥だらけ。
その整った顔も泥で汚れ、長い髪にも乾きかけた土がくっついているのが見て取れた。
彼の手の平の中には、白い石に花が彫られたブローチ。
それを確認したことで、やっと表情を緩めた可奈は、依頼をやり遂げた喜びに浸る空をおずおずと見上げる。
「もう1つだけお願いしてもいい?」
「ん?」
「それ、あの子…菜々香〔ナナカ〕ちゃんに渡してほしいの」
指差す先には、砂場に座り込んで遊ぶ1人の少女がいた。
「そりゃ…別にいいけど、友だちなんだろ? 自分で渡せばいいんじゃね?」
「いいから、お願い!」
手を合わせて頼み込む彼女に、息を吐いた空は…わかった、と言いながら砂場へと歩いて行った。
歩くたびに時下足袋から水が飛び出し、ビチャビチャと音が鳴る。
地面を少しずつ濡らしながら近づいてくる影に、少女 ―― 新海 菜々香〔シンカイ ナナカ〕の方が先に気づいた。
「あ、池で何か取ってたお兄ちゃんだ」
ニコリと笑って空の方に近づいてきた彼女に肩を竦める。
「おう。見てたのか?」
「うん! ねぇ、何かいた?」
「あぁ、こいつを探してたんだ」
差し出したブローチを見て、菜々香は目を丸くする。
「これ……」
「坂田 可奈ちゃんから頼まれたんだ。君に渡してほしいって」
「可奈ちゃん…? うそ!!」
叫んだ彼女は急に後退り…さっきまで笑っていた顔は強張って微かに震えていた。
その様子を不思議に思いつつも、可奈に依頼されたのは嘘ではなかったので、空は優しく微笑みながら首を振る。
「嘘じゃないよ」
「うそだよ!! だって、可奈ちゃんは1ヶ月も前に死んじゃったんだよ? 交通事故で…」
空は、目を見開いた。
そのとき、
ふわり
人には見えない紅の狐火が1つ浮かんで、空にある出来事を見せてくれた。
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