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ポカッ
「ってぇ!!」
いきなり頭に感じた痛みに顔をしかめた彼は、殴った人物。
自分の目の前に浮かぶ…小さな獣を睨みつけた。
男の鋭い視線を真っ向から受け止めるそれは、9つの尾を持つ赤い毛皮の狐。
ふぅ、とため息をつくハンドボールほどの大きさの九尾〔キュウビ〕は、前足を青年の目の前に突きつける。
「空〔ソラ〕、落ちつけ。一時の激情で暴言を吐き、己の願いを潰しては元も子もないではないか」
「う……」
「神には神の事情がある。同じように、そなたにはそなたの、我には我の……事情がある」
体毛と同じく真っ赤な瞳を細めて一瞬黙り込んだ九尾だったが、すぐに首を振ると、空と呼んだ男の頭に乗って
ポンポンと頭を叩く。
「この九尾の紅〔ベニ〕様が手伝ってやっておるのだ。早く成果を出して、その身体を返してもらわねばな」
「俺だって……俺だってそうしてぇよ―――――っ!!」
空の叫びは辺りに響き渡りながら、風に溶けて消えていった。
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