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次に目覚めたとき。
空の前には紅がいた。
それも手乗りサイズではなく…人間の3倍はあるかという巨体。
大きな口の中で光る牙に動けずにいるうちに、衝撃の事実を聞かされた。
端畑 空の身体は死にかけている、ということ。
空の魂が別の者の身体に入っている、ということ。
己の身体に戻るためには、神様が出した課題…“心からの感謝の言葉を108つ集め、数珠を完成させる”…を達成しなければならない、ということ。
その身体は紅の旧友のものであるため、力を貸してやる、ということ。
全て、空には信じられないことだったが、鏡を見れば己の姿が違うという事実。
そして……病院で目の当たりにした、眠り続ける“自分”。
この2つが、空に前を向かせた。
とっさに“何か”を助けて死を覚悟した。
それが、こんな形ではあるが一命を取り留めることができた。
その上、やらなければならないことはあるが、まだ、己として生きる道がある。
なら、やるしかねぇだろ!
『万屋 狐』を開いたのは、それからすぐのことだった。
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