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「レイナ……高科……さん」
足音が後方でしたかと思うと、頭上で聞きなれた声がする。
力なく、ゆっくりと振り向かれた先には――
肩で息をしながら立ち尽くした先輩の姿があった。
「せん……ぱい?」
ここに何しに来たのか、とか。
走ってここまで来たのか……とか。
聞きたいことは沢山あったのに、あえてそれを口に出すことはしなかった。
「隣、いい?」
ぶっきらぼうに放たれた低い声は、初めて先輩と出会ったばかりの頃を思い出させる。
そういえば、こんなに無愛想な先輩を見るのは久しぶりのような気がして……
先輩が私のことを"レイナ"と。
下の名前で呼んでいたことに、あえて気付かないフリをした。
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