remember...

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「うわっ、冷てぇっ」 そう言ってお尻を摩ると、苦虫を噛み潰したような表情で私を見る。 「こんな寒いとこいたら、風邪引くだろう」 「……だったら先輩も同じです。こんなとこに来たら風邪引きますよ?」 しれっとして返されたのが意外だったのだろうか。 しばらく目を丸くすると、声を上げて先輩は笑った。 「……良かった」 低く、落ち着いた声音でそう呟くから、右側に座る先輩の横顔を反射的に見てしまう。 煌びやかなライトに照らされた先輩の横顔が儚く見えて、不覚にもドッキッとしてしまった。 「高科さん……もっと落ち込んでるかと思った」 さっきまであんなに落ち込んでいたのに、とは言えない。 上手くいえないけれど、先輩が来てくれたことで、不謹慎にも心が軽くなったように思えたから。 「……ホラ、高科さん、泣き虫だから」 まるで私の全てを知っているかのような口調は、この先輩だから言えることで。 悲しいけれど、トシには同じセリフは言えないような気がした。 そう気付いた瞬間私の中で感情の波が押し寄せてくる。 何でトシを好きになったんだろう。 私はトシの何を知っていたんだろう。 トシは私の何を知っていたんだろう。 お互い、一体何を見ていたのだろう……と。 .
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