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暗い夜道を、女が走っている。度々後ろを振り返り髪を翻す彼女の視線の先には、人影があった。
“それ”は、つかず離れずの距離で女を追い続ける。時たま煽るように速度を緩めるのが、女の冷静さをさらに奪っていった。
川 ゚ -゚)「くそっ……!」
もう、官舎が見えた。手には既に鍵は握っている。背後の影は幅の狭い階段に足止めを食らうに違いない。女は階段を駆け上がり、そして素早く部屋に滑り込んだ。
荒々しく扉を押し付け、後ろ手で鍵を閉める。はあ、と息を吐いた、そのときだった。
……いる。
誰かが、この部屋の中に。
馬鹿な、そんなはずはない。
だが……。
思考を遮るように、ドアの向こう側から、カツン、カツン、と足音が近付いてくる。
女は電気のスイッチをゆっくりと手で探り、指に力を込めた。
「残念だが、ここまでのようだな」
川;゚ -゚)「くっ……」
扉の向こうで声がそう言ったような気がした。明かりが映し出した状況にすべてを理解し、女は歯噛みした―――。
~( ^ω^)派遣死神と10月のようです2~
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