私だけの物語

3/4
前へ
/22ページ
次へ
夏の夜、真っ暗な田舎道を彼ら彼女らは、はしゃぎながら歩いていた。 そんな彼ら彼女らの中で、篠村由佳里はただ独り、胸の奥から押し寄せる孤独に負けないように、精一杯、この夜道を彼ら彼女らと共に笑い会った。 目的地である堤防に着くと、甲斐谷智大が言う。 「みんな、今日のこと、忘れるなよっ」 甲斐谷智大は、真上に広がる夜空を指さした。 「今日は、流れ星が見えるんだっ」 甲斐谷智大の発言に、彼ら彼女らは嬉しそうにはしゃぐ。 そんな中、篠村由佳里だけは素直に喜べないでいた。 「篠村?どーしたんだ?」 そんな篠村由佳里に気付いたのか、甲斐谷智大が話し掛ける。 「え、あっ、ううん。何でもないよ。甲斐谷くん、一緒に見よっ」 「そーか。ま、今日は楽しもうぜっ」 何か誤魔化すように言った篠村由佳里に、少し納得いかないようだが、甲斐谷智大は頷く。 真っ暗な世界から見る夜空は、まるで星が降るようで。 いつからか、篠村由佳里は、甲斐谷智大に恋心を抱いていた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加