2人が本棚に入れています
本棚に追加
自慢げに言う前田の顔が、凄く可愛くて真っ直ぐ見れなかった。
前田が吹奏楽部の副部長だということは、知っていた。
前田のことは、色々知っている。
でも、知っていることは、人から聞いた情報ばかり。
違う。本当は、前田から聞きたい。
「あれ、どうしたの?」
はっと我に返ると、目の前に前田の顔が迫っていた。
「っ!!」
「大丈夫?」
顔の温度が上がっていくのが、自分でも分かった。
「だ、大丈夫。ごめん、ありがと……」
言い終える前に、チャイムが鳴った。
「あっ、戻るわ。」
「うん」
半分逃げるように、前田の返事を背中に受けながら、自分の席に戻った。
顔の温度はまだ下がらない。
授業の内容なんか、全く頭に入らなくて。
気が付けば、前の方に座る前田の後ろ姿を見つめていた。
肩まである髪の毛を、後ろで一つに結っている。
本当に、本当に、凄く様になっている。
画になるな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!