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―……熱い
真っ赤な火の海が広がっている。
「……っはぁ……はぁっ!」
深い闇の中を走ってる。
熱いと思いながらも、止まりたいと思いながらも、その足は必死に走る。
「…――ちゃん!頑張ってっ!」
幼い私の右手を強く握っている子が振り向いて叫んだ。
…誰だろう?
火の灯かりが逆光して、顔がよくわからない。
でも、私の名前だろうか?
高い声で呼んでくれる度、私は息絶え絶えに頷いている。
その子は、私に安心させるように微笑んだように見えた。
「…あっ!!」
すると、燃え盛る炎により木造の建物が崩れる。
崩れる先には、私と、私の手を握りしめる子がいる。
私は咄嗟に目を閉じ、その子の手を強く握った。
ガラガラガラと木屑と火の粉が舞う。
「――ちゃんっ!!」
…そこでいつも目が覚める。
いつも…いつも…、同じ夢を見る。
あの子は誰だろう?
建物が崩れてきて、どうなったんだろう?
どうして幼い私は、着物を着ていたのだろう……――――
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