第1話.鈴の誘(いざな)い

3/6
前へ
/95ページ
次へ
「…それはそうと、部活は決めたの?」 那岐がちらっと私を見て聞く。 「うーん…、実はまだ」 「だろうと思った」 ひらひら…。 葉桜になりかけている桜並木道を、那岐と見上げながら話す。 「那岐は決まった?」 「俺は入らないよ」 「え~~!?何でっ!?剣道部入んないの?」 意外だ!と、私は那岐の左腕の制服を引っ張る。 那岐は呆れたように、葉桜から私に視線が向く。 「あのねぇ……。中学でしてたからって、高校でもすると思わないでよ」 「う゛…。でも、もったいないなぁー。あんなに強かったのに……」 「俺より。翼はどうなの?中学で吹奏楽入ってたんなら、高校でもやるんでしょ?」 「ん…?うん…」 きょとんと那岐を見つめていると、那岐が首を傾げ「どうかした?」と聞かれた。 そう。 私は中学では吹奏楽部に入っていて、三年間クラリネットを吹いていた。 先輩、後輩にも恵まれていたし、クラリネットも好きになれたから楽しかった。 だから、那岐が言う通り、高校でも吹奏楽部に入るんだろうと思われるんだけど……。 そんな那岐に苦笑いを浮かべる。 「ううん、高校ではどうするか決まってないの。せっかくなんだし、他の部活もいいなぁ~…と思って」 「……ふーん……」 少し納得いかないと言わんばかりに、半目で見てくるので、私は那岐の制服を掴んだまま慌てて先を促す。 .
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加