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「……ほ、ほら!早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「はいはい……」
「はいは一回………あれ?」
今、木の下で何か光った…?
何だろう?
――……リィ…ン
鈴……?
「‥‥っと…翼…?」
いきなり止まった私に、引っ張られていた那岐がぶつかりそうだったと文句を言うが、私は気にせず那岐の制服を掴んだまま何かが光った場所に歩く。
…はずだったのだけど。
「?」
「…待ちなよ。どこ行くの?」
那岐に左手を掴まれて動けなかった。
私は背の高い那岐を振り仰ぐ。
「あそこに何か光る物があるみたいで、それを取りに行こうと思ったんだ」
「光る物…?」
怪しむように片目を細めて言うと、那岐は私の手を放し、私が指さした方に向かう。
「……あれかな?」
そこは私達がいた所からさほど離れておらず、桜並木道でも一際大きい桜の木だった。
――‥リィン…リィン……
「那岐、ま…待って」
また鈴が聞こえた。
今度は強く。
それでかな…?
急に不安になって、少し離れた那岐の背中の制服の裾を掴んでいた。
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