第1話.鈴の誘(いざな)い

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「おっと…。‥‥さっきから掴んでばかりだね、翼は」 「ご…ごめん…」 「別に謝らなくても良いけど」 ふぅ…、と那岐が息を吐く。 うう゛…、あきられたかな…? すると、左手で私の右手を握り。 「謝らなくても良いけどって言ったでしょ。すぐに謝るの、翼の悪い所だよ」 「ごめ……あっ、はい……」 慣れたように那岐は苦笑して、私の手を引き大きい桜の木に近づく。 「確かここらへんだったよね?」 「うん。そのはずなんだけど……那岐、あった?」 「無いね。翼、見間違いだったんじゃない?」 「え~?那岐だって見たでしょ?何かが光ったのを」 「見たけどさ。でも、探してもないんじゃ仕方ないよ」 諦めて帰ろう。 そうたしなめるように微笑んだ那岐に、不覚にも見惚れてしまった……。 だって、葉桜だけど淡いピンクの花びらが、漆黒の髪の那岐に合ってるんだもん。 素直に、綺麗だな‥‥って思ったから。 ――‥リ‥リィン…リィン……リィン… 「ぇ?」 ザアァァ…、と大きな風が巻き起こる。 「う…わっ!凄い風っ!」 繋がれた手が強くなる。 那岐はもう片方の腕で顔を庇いながら叫び、今度は私に叫ぶように話しかける。 「翼!どうしたの?」 「……鈴の音…かな…?何か聞こえない?」 私は耳を澄ますようにして、左手でこの桜吹雪をどかすようにまわりをかく。 .
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