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「…確か…こっちから……」
「翼…?」
スルリ…と、私と那岐の手が放れる。
音が聞こえる。
…澄んだ鈴の音。
しかし、すぐにまた那岐に右手首を掴まれた。
「何かあった?」
「わからない。でも、聞こえる…」
「さっきから言ってる鈴の音?――俺には聞こえないけど…」
少し戸惑ったような那岐の声と表情が、どこか遠くに聞こえる。
――……リィン…リ‥リィン…リィン‥‥リ………リィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィンリィン
―――リィンッ!!
『……見つけた』
「え……」
私じゃない、誰かの声。
その声は“……見つけた”と一言。
声と同時に、目の前が淡く光った。
「きゃっ!?」
「なっ!?」
私と那岐は咄嗟に目を瞑る。
――‥‥リィン
さっきとは違う、最初に聞いた優しい鈴の音に、私は恐る恐る目を開ける。
澄んだ空気。
見たこともない、不思議な空間。
寒くもなく、暖かくもなく。
また澄んだ鈴の音が聞こえると、私の前に焔(ほむら)のような紅い勾玉が浮かんでいた。
「‥‥‥ぇ……紅い…勾玉………?」
私は驚いて目を見開き呟いた。
なんでこんな所に、こんな物が?
それに…、さっきの声は?
私の疑問は浮かぶばかりで、ゆっくり自分の頬をつねってみる。
「…嘘…」
感じた痛みは、これを…現実だと告げていた。
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