あまがさものがたり

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  頑張って笑って差し出した手は 傘からはみ出て雨で濡れた スラッとして綺麗、って やすがよく褒めてくれたなぁ ねぇ すき、すきだよ だからこんなにも 涙が溢れてくるんだ 「何で…」 「…なんでも」 世界中でたったひとりだけ そのひとりがやすだった だけど世界は許してくれないね 目を見られてなくてよかった 今、あのビー玉に見つめられたら すき、が ばれちゃいそう… 「…笑えねぇよ」 「…いいの」 でもこれでいい 俺じゃ、やすを幸せにできない 幸せにするのは、俺じゃない 「ワケわかんないって」 「もうきめたの」 「…勝手に決めんじゃねぇよ」 「だいすきだった」 こんなこと言いたくない 過去にしたくない 愛してるってゆってくれた わがままも許してくれた 愛し合えて幸せだった 勝手だけど優しくて 冷たいけどあったかくて さわりたい キス…したい でも…だめなんだ 「そんなの…」 柔らかい手に力強くひっぱられて 腕のなかに閉じこめられる 「嫌だ、許さない」 「やすっ」 「他の人が出来たの?」 「…ちがっ」 他の人なんていやだよ… やすがいい やすの傍は俺がいい… 依存していたぬくもりに 涙が一気にこみ上げる だいすき、だったから 「一人にしないで…空…」 傍らに傘が落ちていた 耳元できこえた 俺をよぶ小さいこえ 抱きしめたくなったけど 回された腕が俺を離したから もう、最後だね 「ばいばい…ミヤ」 すきだった可愛い手と握手して 強く足を踏み出した またね、やす 振り向かないって決めたから ばいばい、ミヤ サヨナラって言えなくてごめん .
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