二人の夜

7/13
前へ
/590ページ
次へ
「気づいたら私も大きくなってて……友達もいなくて……、でも迷惑はかけられなくて……!」 ティアラの瞳が再び潤みだす。 そういえば……、シルさんが言ってた。 "お嬢様は見えない殻に閉じこもっている"って……。 ティアラはずっと、"自分はお嬢様なんだ"という意識にとらわれてたんだ。 「でもね……」 不意に、俺の手を握るティアラの力が強くなる。 「タイチが変えてくれた」 「……俺が?」 ティアラの口から出てきたのは、紛れもなく俺の名前。 「私ね……タイチには何も気兼ねしないで接しれた。タイチの前では、素の私でいられたんだ」 そういやこんな事も言ってたな……。 "タイチ君が来てから、お嬢様は変わった" 「タイチは私にいろんな事を与えてくれた。泳げるようになったし、大切な友達も作れた」 ティアラの泣き顔が、少しずつ笑顔に変わっていく。
/590ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4573人が本棚に入れています
本棚に追加