二人の夜

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「誰かと口ゲンカしたり、思う存分ワガママ言ったり……ぜーんぶ初めて」 そこでティアラは、いつものようにイタズラな笑顔を見せる。 「タイチは私の初めての執事で、初めての友達で、初めての真正面から向き合える人で……、初めての……」 そこまで言いかけると、ティアラは毛布を鼻辺りまで引っ張り、顔の半分を隠し…… 「…きな……人」 ぼそりと呟いた。 「……?最後、何て……」 毛布のせいか、ティアラの声が小さかったせいか……、いまいち聞き取れなかったんだが…… 「う、うるさいっ!何も言ってないわよっ!」 ティアラは「ふんっ」と、向こうを向いてしまった。 手はしっかりと繋いだまま……。 お嬢様、何も言ってないことはないでしょうよ……、まあいいけどさ。
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