70人が本棚に入れています
本棚に追加
「ネリーから聞いたよ。急な話だが、みんなにも声をかけてね」
ケータの肩にそっと手を乗せた。
「私は肉よ!」
「俺は野菜だ!」
「マントに寝袋!」
みんながそれぞれ思い思いに旅立つものを準備してくれていた。
決して裕福ではない、この村の人々の優しさだった。
「皆さん……ありがとう」
ケータは心の底から思った。
ありがとう、この言葉にこんなに思いを込めたのは、
初めてだった。
「……もう行くんだろ?この村、フランシスカはいつでも君を歓迎するからな!」
「……え?」
「驚くことはないだろう!なあ、みんな!!」
村人から肯定の返事が返ってくる。
が、そこは申し訳ないが大して重要ではなかった。
「…………」
しばし、ケータは言葉が出なかった。
「ケータ。ケータは、この村の英雄だ!だから、我が家のようにいつでも村に帰ってきなさい」
こんな怪しい旅人――正確には旅人ではないが、
こんな優しい言葉をくれるこの村人達は底抜けに優しいのだろう、とケータは勝手に勘違いをしていた。
この村が閉鎖的であり、あまりよそ者は好まれない村だとは、
ケータは夢にも思わないだろう。
ただ、優しい云々は大変申し訳ないがケータにとってあまり重要ではなかった。
(これ、今すぐ村から出て行くってこと!?……そういうこと!?)
ケータは別の意味でも泣きそうになった。
最初のコメントを投稿しよう!