第一章 第一話 始まりの村

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「おぉい、ケータやい」 「あっドゥルーさん」 ケータの前から歩いて来たのは恰幅のいい男性。 「今日も泊まっていくのかい?」 頭にオレンジのターバンに、白いシャツ――ドゥルーと呼ばれた男性の職業は宿屋の店主。 褐色の肌に上を向いたちょび髭は、恰幅もあることも含め、若干胡散臭い。 「はい……けど……」 ケータは片手に持っている布袋を見る。 本来なら足りているはずだったゴルドが、その中には申し訳なさそうに七枚入っているばかりである。 「ゴルドがないのかい?馬鹿だな、気にしなくていいぞ」 ドゥルーは疑いたくなるような気のいい、いや、良すぎる性格をしていた。 事実、ケータは何度も疑いをかけたが、ことごとくそれはただの善意だと気付かされた。 (こんな人……あの世界には一人もいなかった……)
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