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「これ。起きなさい!ロビン。」
腰まで伸びた白髪と、胸まで伸びる白い髭を揺らして、居眠りをする少年の肩を叩いたのは、この村の長老【アタナシウス=キルハ】。
村人たちからは『キルハ様』と呼ばれ、敬われている。
一方、居眠りを見つけられてしまった少年の名は【ロビン】。
まだやんちゃ盛りの14才だ。
ここは【ハインベル】という小さな村。
霊峰リンカの南の麓に位置し、大森林に囲まれた静かな場所だ。
村人はおよそ800人。
外部からの来訪者もほとんどないこの村は、村独自の風習を守りながら、ひっそりと平和な日々を送ってきた。
村は『大講堂』を中心に民家が集まり、生活圏を形成している。
上空から見れば、大森林の中にぽっかり開いた、小さな穴のように見えるだろう。
『大講堂』とは村唯一の公共施設である。
しかし、名前とは裏腹に、実はそれほど大きな建物ではない。
現に村人全員が一斉に集まったところで、収容できる広さは備えていないのだ。
だが、村で一番大きな建物なのは確かである。
その屋根の上には、一際目につく高い鐘楼がある。
そこに登れば、村のほとんどを見渡すことができた。
大講堂は主に集会場として用いられているが、それとは別に、週に二度、午前中を利用してキルハの講義が行われている。
対象者は15才までの子供たち。
学校がない村の子供たちに、キルハが基本的な生活知識、基礎的な学問、村の風習などを教える。
ロビンが居眠りをしていたのは、まさにその講義の真っ最中だった。
キルハに肩を叩かれ、寝ぼけ顔で周囲を見渡すロビンに、キルハが厳しい口調で言った。
「話は聞いていたのか?」
「・・・聞いてました。」
眠そうに目を擦りながら、平然とこう言ってのけたロビンを、他の子供たちが声を押し殺して笑う。
「では、質問する。魂がこの世に生まれる場所は?」
「産婆さんのとこ!」
「では、魂がこの世を離れる場所は?」
「んー・・お墓?」
「ばかもの!!」
ロビンの頭にげんこつが落ちる。
「それは人の生死の話であろう!」
「いってー・・」
ロビンは痛みに声をあげ、頭を抱えた。
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